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新訳風土記集 其ノ伍 唐櫃由来譚 壱
新訳風土記集 其ノ伍 唐櫃由来譚 壱
Folklore of the new adaptation no.5 : Karouto Yuraitan1
F120号 / キャンバスに油彩 、アクリル
1303×1940mm / oil on canvas, acrylic paint
Folklore of the new adaptation no.5 : Karouto Yuraitan1
F120号 / キャンバスに油彩 、アクリル
1303×1940mm / oil on canvas, acrylic paint
詳細情報
「唐櫃由来譚について」
東北の山間のある村で、『唐櫃』(かろうと)という名前の嫁入り道具箱に嫁が亡くなったら遺体をその箱に入れて土葬する、という習俗が火葬が始まるまで続いていた事を知った。
私は女性の生と死をあまりにも軽んじているとのではないかと衝撃を受け、取材に訪れた。
実際は、雪深い冬に棺桶用の木材を切り出さなくても済むよう備える為に始まった合理的な慣習で、男性も同様に埋葬され、女性達は軽んじられるどころかとても大切にされており、両親からの最後の贈り物として一流の職人に最高級の木材で唐櫃を作ってもらっていた様である。
誤解から始まった取材ではあったが、村を訪れて感受したものを抽出し、自分の中で再構築し、絵に昇華したつもりである。
棺桶の中に結婚生活の道具を入れて嫁入りする、とは、即ち死を強烈に意識してから暮らしを始める、死から逆算して生を考えるという行為である。必ず訪れる死が生活にぴったりと張り付いているのである。死とは生そのものなのだろうか。
『唐櫃』というシステムに触れて以来、死生観が私の芸術活動の大事なテーマの一つとなった。